高田造園スタッフの大平です。
栃木県那須町の廃校を活用した施設、「那須まちづくり広場」さま主催にて全3回を予定している有機土木連続講座、第1回のご報告です。
後援:(一社)有機土木協会
元校庭に平屋住宅が立ち並んだこの施設は、住宅周りの非常に悪い水はけに悩んでいました。2024年7月より有機土木による環境改善開始、降雨を排除するのではなくその場で染み込ませ、土地を涵養し、人だけでなく木々をはじめとした多様な生き物が息づく場所を目指して高田造園による施工を続けております。
那須まちづくり広場さまは、老若男女様々な人々が集う「まち」づくりを目指しておられます。今回も参加型で!という強いご希望があり、ご入居者さまだけでなく那須町在住の方、有機土木に関心のある方にひろくお声がけし講座を開催することができました。
平日の暑いなかでしたが、スタッフ含め総勢20名ほどでのにぎやかな作業となりました。
初日はまず高田親方から、有機土木とは何ぞや?のガイダンス
皆さまの期待が高まったところで、施工開始です!
今回は元校庭に通ったアスファルト道路周りの通気浸透環境改善を行いました。高い道路から低い庭へ、道路のチリを含んだ降雨が流れ込み、庭を泥詰まりさせ水はけを悪化させるという悪循環を断ち切るべく
1. 道路際に通気浸透溝
2. 植栽マウンド
を設置しました。
1. 道路際に通気浸透溝
溝に集水し、降雨の地下浸透を促すとともに、落ち葉や藁といった有機物を溝に入れ、生き物による降雨の浄化をねらいます。浄化された水でなければ地下水脈の発達は難しく、生き物頼りの環境づくりであることを参加者さんにお伝えしたところ、
「菌も虫も必要なのね、もうとらないわ」
「庭いじりででる草も資材になるのかしら」
とさっそく生活に落とし込んでくださり、スタッフとして嬉しく感じました。
施工の様子。庭に泥水が流れ込まないよう、溝に丸太や石をいれ暗渠化、道より少し高くします。有機物も忘れずしっかりつめていきます。
*暗渠
地上からは見えない地下の溝、水や空気、生き物が動く空間のこと
開渠は上部があいており、有機土木では集まる水の量や周辺環境との関係性に応じて暗渠と開渠を使い分けます。(キャプションおわり)
道より少し高くすることで、庭への泥水の流入を防ぎます
2.植栽マウンド
溝掘り、穴掘りと植栽マウンドは必ずセット。掘ってでた土を盛り上げて高低差をつくり、通気浸透性のよい高地(マウンド)に木を植えることで木の成長がよくなるだけでなく、環境も同時によくなっていきます。
根の周囲で土の団粒化がすすみ、根を起点に生物に好ましい通気浸透環境や地下水脈がより地中深く、広く発達していくのです。
また、木は木陰をつくり、水を吸い上げ、地上にも潤いをもたらしてくれ、多様な生物のよすがとなります。
参加者の方が苗木を扱う手つきがやさしく、共に環境をつくる仲間として扱ってくださっていることが伝わってきました。
マウンド
WS翌日はスタッフ5人で本気の施工、でしたが講座参加者さんが5人も応援で駆けつけてくださりました。
復習がてら…と言いながらひたすらに溝掘り、石運び、落ち葉つめ、と黙々と作業していただいたおかげで目標まで施工を進めることができました。
有機土木は人頼り、生き物頼りで、つながりがだんだん豊かになっていく、そんな古くて新しい土木のあり方であることを改めて感じました。
そういえば、今回施工技術長を務めてくださった大谷さんも、講座参加者としてのお付き合いスタートでした。経験を重ねられた現在は各地で有機土木を実践、有機土木指導者としてもご活躍されています。
今後も講座や施工に参加いただく機会を計画し、有機土木という視点、技術を様々な方と共有させていただければと存じます。
次回那須WSは9/23を予定しております。翌日24日はスタッフ施工、ボランティア参加大歓迎です。皆さまとお会いできることを楽しみにしております!
最後になりましたが、講座を主催いただきました那須まちづくり広場さまに心より御礼申し上げます。