1. 有機土木とは
有機土木とは

 現代の土木、インフラ整備は、材料調達、施工過程、施工後の工作物、その後の廃棄。すべての段階で土地を傷める要素を内在しています。それに対して、有機土木は、大地に根差して暮らしてきた先人たちがその営みの中で伝統的に積み重ねてきた知恵と視点に基づき、技術や施工体系をもとに、健康な土地を育みながら、防災や災害復旧、インフラ整備などの目的を果たす本来の土木(民衆の自然観 民衆の土木)です。


 各地(耕作放棄地や人が踏み入れなくなって久しい山中など)には今もなお、土と石と木などの有機物で構築されたかつての土木造作の名残がみられます。土地に生きる人たちによって培われてきた知恵がそこに結集しており、適度な観察とメンテナンスによって代々持続し、なおかつ土地環境がより豊かに育まれ、それが美しい風土となる。有機土木は風土を育む土木とも言えます。

 しかし、現代の土木は変化を食い止めるため、構造体の中から有機物を徹底的に排除してしまいます。


 有機土木と命名した理由はここにあります。有機土木が有機的に変化し、平衡状態を保つ作用を活かして構築し、限界を定めるものである点で、無機的で反生きもの的な現代土木の指向と対比できると考えたからです。