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(高田宏臣寄稿)等々力渓谷樹林健全化作業計画立案から実作業指導の受注が決まりました

東京都指定名勝、東京都区内に唯一残された貴重な渓谷、世田谷区等々力渓谷。

都区内にあって極めて貴重な渓谷林だが、問題は多い、というか、課題だらけだ。
今、樹林地健全化を決断した世田谷区の英断に感謝。

今後3年間にわたる等々力渓谷樹林健全化作業計画立案から実作業指導までの計画全般について、世田谷区のプロポーザル審査を経て高田造園で受注することになりました。
 今年度(令和7年度)から令和9年度まで、私の方でこの等々力渓谷林の健全化を計画し、秋から着手いたします。
 この等々力渓谷は2年前の幹折れによる倒木事故を受けて遊歩道の閉鎖が続いておりました。
 深刻な倒木事故が起こると、その後、樹木医診断の後、危険木(この呼び方はとても抵抗がありますが、、)の大量伐採が始まります。
しかし大抵は、切る必要のない木まで伐採されて返って環境を荒らしてしまうことが大変多く、その後、斜面崩壊や連鎖的な倒木枯損が続くケースが非常に多く見られます。
 そんな中、一昨年、倒木対処について相談を受けた世田谷区に、以下のお話をしたのでした。
「伐採と斜面の改善を必ずセットで行うことで、次世代の森が自律的に育つ健全な環境を回復させることが大切。
 単に危険木衰弱木を伐採したところで、危険が回避されるわけではなく、なぜ木々が倒木するのか、斜面が崩壊してゆくのか、環境面から健全なありように再生させていかねば、等々力渓谷は守れない。」
これを受けて、昨年、環境調査と報告書作成の依頼を受けて、現状と課題をまとめ、また昨年中に二度ほど、閉鎖中の等々力渓谷で作業を実践しました。
 その結果が評価され、その後、世田谷区内で慎重に審査や手続きが進められ、今後3年間の渓谷樹林健全化計画を私たちに一任されることとなりました次第です。
 昨日、令和7年度工区の計画立案のための調査に伺い、これから急ぎ、計画を進め、秋には着手する運びとなりました。
 来春には遊歩道の閉鎖が解除される予定ですので、その後の作業の様子は、遊歩道から見ることができます。
実際、問題箇所が多く、というより、深刻な状況でありますが、今、多くの河岸段丘が抱える問題に対して対処の仕方や改善計画のあり方考え方を体系化し、そして各地で応用できるものとしてゆくよう、力を尽くして参ります。



荒廃して土層分断面が上昇してくると、こうした小規模地すべりが多発し、そして崩壊土砂が土砂ダムとなり、滞水箇所をまし、斜面を不安定化してゆく。

 これも適切かつ体系化した対処方法で、再びしっとりと安定した状態にすることは実は難しくないこと。


一期工区における斜面健全化対策箇所をピックアップしにきたのだが、問題箇所だらけ
今、日本中の斜面林の多くがこうした危機に直面しており、そしてその原因もはっきりしている
ここで対処方法と観察の視点を体系化してゆくことの意義は大きい