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(会員寄稿)建築 + 土中環境 / 「学校の先生とつくる家」有機土木 施工会 第一期レポート(2025年12月20日開催)


建築 + 土中環境 / 「学校の先生とつくる家」有機土木 施工会 第一期レポート

パッシブデザインプラス株式会社

冨田享祐・冨田倫世

 

はじめに ー 家づくりプロジェクトの背景

現在の住まいを解体して、新築を建てることを決断された建主ご夫婦。

建主のご両親の家を設計したご縁もあって、私たちに設計のご相談を頂いたのですが、ご要望をお聞きする中で


「家を建てかえるために、膨大なゴミが出るのが心苦しい。」

「できるだけ今あるものを次の家でも生かせないか。」


という話になりました。私たちも「できるだけものを捨てない」「あるものを生かす」という考えで仕事をしてきたこともあり、これを大切な軸としてプロジェクトを進める運びとなりました。


△提案段階のイメージ図

学校の先生でもあるご夫婦。雨・太陽・風・土・植物といった自然の力をうまく生かし、今あるものや、解体で破棄されるものを使っていく。ご夫婦中心に、子どもたち、学校の生徒、地域の方、工務店関係者、共に自然・生き物・人間が共存する暮らしのあり方を考え、学び、体感しながら楽しくつくる家。

解体フェーズは、宝の山

設計が進み、建物の解体フェーズを迎えると、新しい家で活かせそうなもの(建具、敷居・鴨居、柱、トイレの便器、洗面器、照明器具、タタミ、造作家具、、等々)はご夫婦や子どもたちと共に解体前から搬出し、保管していきました。アルミ製のバルコニーなども丁寧に解体し、子ども達と回収業者やリサイクルセンターに売りに行き、ちょっとしたお小遣いにもなりました。


私たちはこれまで9件ほど土中を意識した庭づくりに携わってきたこともあり、ここでの庭づくりも当然、それを前提にしていたので、建物の取り壊し段階では解体業者の協力を得ながら、基礎のコンクリートやブロック塀・土中の石・伐採した枝葉も、後に資材として再利用できるように保管をしていました。


今回、3週間に渡る解体工事にまめに立会うことで分かったことが多くありました。

例えば、建物・駐車場・屋外設備周りなどは、解体時、地表から深さ60-80cmまでの土が掘り返されることが多いということです。その中で8cm以上の石や瓦などの地中残置物は、産業廃棄物とみなされるとのこと。今回の場合、さらに8cm以下の細かい石や瓦も取り除きたければ、別途費用を支払い、撤去をお願いする必要がありました。


そこから出た大小の石や瓦などは、土中改善・有機土木の施工では、重要な働きをする資材として再利用できるのですから、取り除くどころか、むしろ確保しておきたい。改めてこれらが宝のように思え、解体業者にも協力をいただきながら、仕分けして保管をしていきました。秋になると、有機土木に携わる皆さんが落ち葉に目を輝かせる瞬間と全く同じですね。


設計・施工者側の悩み ー 建築前の、敷地の土をどう扱うべきか

前置きが長くなりましたが、設計当初からの私たちの悩みは、これから始まる地盤改良・基礎工事のフェーズで生じる大量の残土(25 立米)をどうするか?ということでした。


残土は敷地内で利用できなければ通常は産業廃棄物の扱いとなります。

捨てるなら、その処分費は25万円ほど。敷地の中でうまく収められる方法を模索し、日干しレンガにする?アースバックにする?など考えていましたが、それでもせいぜい使う量は2,3立米に留まります。残りはやはり捨てるしかないのかと半ば諦めもありました。


しかし、石坂産業さまで高田宏臣さんと水庭工事をご一緒し、土の扱いや施工内容を見ていく中で、有機土木であれば、敷地全体に残土を敷き均すことも可能ではないか?と思い始めました。


この敷地では、現状地盤から15cm嵩上げし、全体に均せば残土を使い切ることができます。

設計者の目線で普通に考えると、盛土した土は柔らかく、基礎部分の地耐力確保の検討も必要で、このような処置には慎重になってしまいます。単に土を盛って嵩上げすると、元々の地盤と透水性が違うので、ぬかるみ・沈みの原因となり、建物周りの滞水を助長してしまいます。


しかし今回、設計側で基礎や地盤改良の方法を工夫すると同時に、有機土木による盛土工法や滞水解消の技法を使えば、健全で安全な状態で盛土が可能になるかもしれないと思い、高田さんと相談しながら進めることになりました。


今回工事を担当してくださる施工会社「多久田屋」の多久田さんも、以前から「解体後の土の上に、そのまま建物を建てて、本当に良いのだろうか?」と疑問を抱かれていた方でした。その問いに応える事例もこれまでなかったこともあり、施工側・設計側の立場から、建物工事を始める前の課題解決として有機土木の施工に挑戦することになったのです。

1期工事 施工会のようす

当日の施工会では、主に次の施工を行いました。



実施内容目的
1敷地境界の浸透処置・土留めづくり浸透機能を持たせる溝を兼ねながら、15cmほど敷地を嵩上げすることを想定した土留めをつくる。まずは工事が始まると作業が難しくなる隣地側から着手。
2既存の植栽帯の保護工事中の車両の重圧や作業の影響を受けて既存植栽帯が痛まないよう、植栽帯と通路を縁切りする。同時に浸透を促す処置を行い、既存の土中がさらに育つ処置をする。
3沈砂池づくり工事中の泥水を流せる場所として、敷地の低い場所に深さ1mほどの沈砂池をつくる。将来的にはここを雨池とするため、その間に土を傷めず、かつ土を育てる役割も担わせる。
4作業で発生した残土の処置柱状改良で再び掘り返される場所でもあるので、簡易的な盛土処置をする。溝をほり、炭・くんたんと土を層状に盛りながら、できるだけ雨で土がぬかるまないように敷き均す。


1.敷地境界の浸透処置・土留めづくり

この地域の地形に沿って、高い方から低い方へ、段切りをしながら水の流れを促していきます。

△ 隣地境界に沿って、幅・深さ300mm程度の溝を掘る。敷地の高低差に合わせて、3段階で段切りをしながら。

△ 浸透誘導杭を4m間隔で3本程度打ち込み、その上に藁を敷き、コンクリートガラや瓦を小端立てる。間には炭・くんたん・落ち葉を詰めていく。(※ コンクリートガラの代わりに皮付き丸太をのせた場所もある。)

△ その上に皮付き丸太を載せる。土留めにもなる浸透誘導杭(上記とは別に打ち込んだもの)と固定する。

△ 隣地境界にあるブロック塀周辺が滞水しないよう、かつ、塀をさらに安定させるために、多めに浸透誘導杭を打っていく。

△ 作業後の様子。盛土の際は、これが土留めの役割も果たしてくれる。


2.既存の植栽帯の保護

植栽帯の高低差や将来駐車場になる場所を確認。水が集まりやすい谷地形を意識しながら、それに沿って水の染み込む拠点をつくっていきます。植栽帯と重機や人の踏圧のかかる場所を区別していきます。


△ 手ぐわで溝を切り、固く締まった層を貫通させるよう浸透誘導杭を打っていく。手ぐわの使い方、通気浸透を高めるグリグリ棒の使い方もレクチャー受けながら作業を実施。


△ 浸透誘導杭を深く打ち込み、落ち葉や瓦を敷きながら、石を据えていく。美しく、かつ浸透効果のある石の置き方のレクチャーも。


△ 作業後の様子。一部杭が見えたままになっているのは、工事車両が植栽帯に乗り込み過ぎないよう、目印としてあえて残した。


3.沈砂池づくり

敷地の低い場所に集水する場所をつくります。藁・剪定枝・炭・くんたんを使った簡易的で、かつ効果的な方法を学んでいきました。


△ 深さ1mほど、空気に触れる表面積を多く取るため、あえて歪な形に掘り込む。子どもたちも遊びながら参加してくれた。
△ ここは建築後、雨池として庭づくりをする。その間、藁や伐採枝を使って、泥越しをしながら土を育てる場所となる。


4.作業で発生した残土の処置

建物の建つ場所に、今回の施工で発生した残土を盛っていきます。来年の地盤改良や基礎工事で再び掘り返される場所なので、溝を掘り、炭・くんたんを撒いて、その時までぬかるまないように、簡易的な処置としています。


△最後は全員で炭・くんたんを撒き、残土を敷ならす。

施工を終えて & 今後の予定

今回の有機土木施工は、建物や駐車場の下から始まるのかと思っていましたが、そうではなく植栽帯・隣地境界から着手されたことが驚きでした。これはまさに、水の動きを意識した本質的・根本的な対処だと感じています。見た目にも、隣地境界や植栽帯との区別がしっかりできたことで敷地内にメリハリがつき、安定感がグッと変わっています。また、解体で生じたコンクリートガラや瓦などは、今回の作業だけでほぼ使い切ることができましたし、改めて積極的に残しておいて良かったと実感しました。植栽帯にも谷と山があるということを常に意識しながら作業を進めることも大きかったです。工事前にすでに潤いを保てる美しい庭になっています。


今後は引き続き、高田さんの指導を頂きながら、地盤改良・基礎工事の処置、建物の屋根をかける前後の処置、庭づくりなど、この敷地の土中の滞水を防ぎながら、環境を育てながら、作業を進めていく予定です。